エアパックの可塑状固結理論
一般にエアモルタルは、セメント・骨材・起泡剤および水を主体として、エア(気泡群)を混合し、固体粒子(セメントおよび骨材)をグラウト中に分散させて材料分離の防止や流動性をもたせたグラウトです。しかし、エアは決して強いものではないので、水と接触するとエアと固体粒子が分離し、グラウトとしての欠陥をもたらすことになります。
      このような水の存在下でエアと固体粒子の分離を防止するには、グラウト自体の粘性を瞬時(ゲルタイムでいえば0秒)に、大幅(数万センチポイズ程度以上)に増大する必要があります。同時に若干の加圧で流動し、容易に空洞に充填できる程度の固結強さを持ち合わせたグラウトに変質、つまり可塑状固結させることが必要です。
      そこで、流動状のエアモルタル(A液)に可塑剤(B液)を加えて瞬時に可塑状固結させる「エアパック工法」を開発しました。
      この工法に用いる可塑剤(AP-2)の主成分は特殊アルミニウム塩化合物であり、アルミニウムイオン(Al3+)は水溶液中では(Al(OH2)6)3+の形で存在しており、これにアルカリ剤(A液中のセメント)を加えると、瞬時に白色の膠状沈殿の水酸化アルミニウムゾルを生成します。
| n〔Al(OH2)6〕3+ | + | 3nOH- | → | Aln(OH)3n+6nH2O | 
| アルミニウム 塩(B液) | 
 | アルカリ 剤(A液) | 
 | 水酸化アルミ ニウムゾル | 
この式の水酸化アルミニウムゾルは、巨大分子であり、A液(流動性)中の多量の水を包含した膠状沈殿であるため、流動状から可塑状に変質させるのがエアパック工法の固結理論です。また前式の反応が瞬時で起こるためグラウト中のエアを封じ込めることができます。
エアパックの配合
エアパックの設計強度は、セメント、骨材およびエア量により数多くの組み合わせができます。配合例は以下の通りですが、その他特殊配合の場合も設定できます。
(A液)①セメント:	普通ポルトランドセメント
          ②骨材:	細目砂を主とするが微粒子骨材も利用することができます。
          ③AP-1:	特殊起泡剤
      (B液)①AP-2:	可塑剤で粉体を水で溶解して使用します。
設計配合例(現場製造) A液+B液=1,000リットル(kg:質量表示)
| A液(961.54リットル) | B液(38.46リットル) | 特性 | |||||||
| セメント(kg) | 砂(kg) | 混練水(kg) | AP-1(kg) | 希釈水(kg) | AP-2(kg) | 溶解水(kg) | A液の比重 | エア量(%) | 圧縮強度(N/mm2) | 
| 240 | 481 | 183 | 1.50 | 24.3 | 22.62 | 27.2 | 0.97 | 49 | 0.7 | 
| 288 | 577 | 206 | 1.27 | 20.7 | 22.62 | 27.2 | 1.14 | 41 | 1.5 | 
設計配合例(生コン取り) A液+B液=1,000リットル(kg:質量表示)
| A液(961.54リットル) | B液(38.46リットル) | 特性 | |||||
| 特殊モルタル(m3) | AP-1(kg) | 希釈水(kg) | AP-2(kg) | 溶解水(kg) | A液の比重 | エア量(%) | 圧縮強度(N/mm2) | 
| ※1 0.447 | 1.50 | 24.3 | 22.62 | 27.2 | 0.97 | 49 | 0.7 | 
| ※2 0.523 | 1.27 | 20.7 | 22.62 | 27.2 | 1.14 | 41 | 1.5 | 
※砂は、粗粒率(FM値)2以下の使用を推奨。
特殊モルタル配合例(1m3当たり)
| セメント(kg) | 砂(kg) | 水(kg) | 
| ※1 538 | 1,076 | 409 | 
| ※2 551 | 1,102 | 395 | 
・セメント比重 3.15
    ・砂比重 2.56
エアパックの使用材料
エアパックの使用材料のAP-1、AP-2の物性(性質・形状)は表の通りです。
| 材料名 | 性質 | 外観 | 比重 | PH | 荷姿 | 
| AP-1(特殊起泡剤) | 特殊蛋白質 | 黒褐色液体 | 1.17 | 7 | 20kg缶または200kgドラム缶 | 
| AP-2(可塑剤) | 特殊アルミニウム塩 | 白色粉体 | 1.6 | 3.5※ | 25kg入袋 | 
・AP-2は可溶性のため水溶解時には比重2.0で計算します。
      ※1%水溶液




 
 
  